たぶん、トクベツちがいな恋。
プロローグ!


・・・☆


世の中に存在する男のほとんどは、好きな人の「トクベツ」が見られたら、それだけで舞い上がってしまうんじゃないかと思っている。

これは完璧に俺の持論だし、該当しない人もいるのかもしれない。でも、俺の場合はそうだ。

好きな子の「トクベツ」は、俺の特別。
俺にしか見せてくれない表情や言葉は、昔から大切な宝物。

たとえそれが、俺じゃない誰かを想って流した涙だとしても、傷ついて頼ってきたのには代わりはないのだから。



「…あたしは、あの人の前で笑ってなきゃいけないの。涙なんか、見せちゃだめなの」

「…」



…でも、どうやら彼女にとっての「トクベツ」は、俺と同じじゃないらしい。


彼女にとっての「トクベツ」は、好きな奴の前で笑うこと。

泣くことの方が多い彼女にとっては、笑顔の方がよっぽど価値があるらしい。


そんな現実を、もう随分前から、俺は思い知らされてきた。



「…そんなに苦しいなら、もうやめればいいじゃん」


何回、何年、こんなことを言い続けてきたのだろう。

…彼女に対してじゃない。

彼女のことがどうしようもなく好きな、俺自身に。




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