見た目通りには行かない




「あっ!若!おはようございます!
あの!か、川口麗さんはもう来られないのですか?
若の会社の人と聞いたのですが………」

「そんな事聞いてどうする?」


川口麗とは、六年前に忽然と姿を消した柔道家だ
この前、若と光輝さんが連れてきて稽古をつけてもらった
組員は俺も含めみんな充実してた

ただ、若も光輝さんも柔道には全く興味が無いからそんな話をしても面白くないだろう
どう伝えれば良いか言い澱んでいたら、ぐっと胸ぐらを捕まれた


「わ、若?」

「お前、麗を…………」

「え?」


麗?名前呼び?
え?

あの、稽古をつけてもらった後に川口麗と竜さんが知り合いだったみたいで
組員みんなで、二人が出来てると噂していた

も、もしかして?


「あっ、そんなんじゃないです!
川口麗さんは竜さんの女だとわかってますので!」



若と光輝さんと竜さんは同じ年だ
親友とも言える間柄だ
きっと、俺を警戒したんだ

そう言うと、さらにぐっと力を入れてきた
く、苦しい
な、なんで……


「わ、わかっ………」


最近の若はたまにわからない
一人で歩いているときに笑っている事もあれば
今みたいに急に怒り出したと他の組員から聞いたこともあった


「こらっ!尊!」


可愛らしい声が聞こえて来たと思ったら、一気に呼吸が楽になる
ゴホッと咳き込んでしまう


「何してたの!」

「あ、いや、」



戸惑う若に怒っている女性は川口麗だった








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