見た目通りには行かない





「あの後、組長に拾ってもらったよ」

「はい、」

「知ってたのか?」

「いえ、でもあの一本背負いは忘れません
受けた先輩はもっとわかると思います
本当に強い男に悪い人はいません
正木組長は私の憧れです」

「は?お前、あんな親父に憧れんな!麗は俺だけ見てたら良い」

「「尊………」」



ほんと、お前なんで来たんだよ
話が進まねぇよ



「川口……俺はあの時からずっとお前を想ってるよ」

「え?」

「あの時、付き合ってって言っただろ?」

「あ、ありがとうございます
でも、私は尊の事が好きなので、ごめんなさい」


真っ直ぐ、あの時と変わらない瞳に込み上げて来るものを押さえた


「川口は変わってないな
相変わらずいい女だよ」

「え?」

「おい!尊!お前一人で悶絶すんな!
川口を泣かせたら俺がもらうからな!
光輝も黙ってないぞ!」

「麗……帰ろう」

「「え?」」


おい!俺が言った言葉聞いてるのか?
無視か?



「おい、尊」

「麗……俺も麗が好きだ
いや、愛してるよ
今から抱きたい、麗にはいつも触ってたい
俺の隣から離れるな
毎日でも、朝から晩まで麗を抱いてたいんだ」

「や、あ、あの、尊………」


甘ったるい雰囲気に俺は唖然とした
川口は困ったように顔を赤らめて、また、その姿に尊は口許を押さえながら「ぐっ」と何とも言えない音を漏らした

あれは、悶絶してたのか



「麗……俺のことも"先輩"って呼んでくれ」


きもっ
本当に尊なのだろうか?





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