“あなたを愛しています”





それにしても、無茶をする人たちだ。

こうやって無理強いをすればするほど、俺の心は離れていくのに。

思い返せば、何一つ自由はなかった。

何一つ楽しくなかった。




物心がついた頃から、将来は家元になると育てられた。

厳しい華道教育の他に、茶道や書道、着付けの練習までさせられた。

友達はみんな外で遊んでいるのに、俺は一人で花を生けていた。




中学生の時、不意に反発意識が芽生えた。

華道部と偽り、サッカー部に入部した。初めて友達が出来た。

それでも……名門校を受験させられ、友達と離れ離れになった。


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