ほんもの。

それから、自分が好きか、と泣いた安藤を思い出す。

あれが本物なのかもしれない。

愛に形があるなら。

「信じる」

「……ありがとう、ございます」

「どうして敬語?」

「いや、ここまで上げられた後に落とされたら、たぶん立ち直れねえなと思って」

「上げて落とす?」

何でもない、と安藤が話を止めた。メニューを捲って、何を食べるのかと訊く。

私はドリアとアイスティーを注文した。

「もしも、もしもの話なんだけど」

先に来たアイスティーにストローを差す。安藤はアイスコーヒーにストローを差していた。

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