ほんもの。
結婚すると決まっているわけでもないんだし。
兄の部屋に忍び込んでアルバムを持ち逃げし、私の部屋に避難した。
「あんまり物無いな」
「今の部屋に殆ど持って行っちゃってるから」
「ふうん」
安藤はアルバムを抱えたままベッドに寄りかかり、浅く溜息を吐いた。
疲れたらしい。確かに、私の気苦労よりも安藤の方が多いに決まっている。
他人の家って結構気を遣うし。
「これ全部参考書? すげえな」
本棚を見てコメントを言う。私もそちらを見た。
「塾講師してたから」
「意外」
ちょっと笑った。