ほんもの。
エピローグ
愛をかたちにするなら、きっとこのかたちだ。
誰かがそんなことを言っていた気がする。
「明けましておめでとうございます」
「おめでとう」
「今年もよろしくお願いします」
「よろしく」
「略すのずるい。私だってあけおめ、ことよろって言いたい」
勝手に言えば良いのに、とそちらを見れば、数秒目が合う。それから十和子はリモコンを取る。
十和子の両親は挨拶回りに出掛け、家は静かだった。なかなか大きい家だと思う。
俺は二日酔いの頭をソファーに寄りかけて、正月番組を見ていた。
十和子がミネラルウォーターを差し出してくれる。