ほんもの。
ニセモノの価値とは。
偽物は、本物とは違うことを証明できれば良い。
じゃあ、本物はどうやって証明するのだろう。
九時を示す置時計を掴んで、この部屋が安藤のだったことを思い出した。
起き上がって、置時計を戻す。服どこだろう。安藤も居ない。
ベッドから降りて寝室を静かに出た。リビングへ顔を出すと、ソファーに座っていた安藤がこちらをすぐに向いた。
「……お、はようございます」
「はよ」
立ち上がって、新聞を畳む。新聞取ってるんだ。
台所に行った安藤を目で見送り、私は安藤が置いていった新聞を広げる。
「パンと飯」
「うん?」
「どっち食う?」