蓼科家物語 四女 桜和の話

右「若っ!着きました、ここですよ」

春「ああ、………ここ?」


右「はいっ」


車を降りて門の前に立つ。


間違いない。ここは……………桜和の家だ。そっか、そういえば、旅館だった。たしか暖弥が言ってた…。


中に入るのは、あの日以来か…。


正門から進んで、引き戸を開けると従業員が1人待ち構えていた。


「ようこそ、いらっしゃいました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


右「あ、鷹獣会(oujyuukai)の宴会場ってどこですか?」


「はい、ただいまご案内します」


従業員についていって宴会場に入ると、まだじいさんは来ていなくて、あたりはしーんと静まっている。


俺が来たところで挨拶するものもそういない。まあ、今日は和葉がいるからできないのだろう。


じいさんが来るまでひたすら沈黙は続く。



やがて襖が開いた。

瞬間、その場にいた全員がはいって来た人物の方を向き、一斉に頭を下げる。


「「お疲れ様です!会長っ」」

頭を下げているのでじいさんの顔は見えないが、まあ無表情といったところか。


「おう、お前たち。今日はよく集まってくれたな」


一声かけてじいさんは上座に座った。



すると、タイミングよく女将と板長が入ってきた。


花「失礼します。当旅館女将の蓼科 花(tateshina hana)と申します。本日こちらのものとともにこの部屋を担当します。よろしくお願いします」

「板長の神原 完二(kanbara kanji)です。ご宴会ということで、料理の説明は省略させていただきます。どうぞ、心ゆくまで召し上がってください」

桃「若女将の蓼科 桃葉です。なにかあればご遠慮なくお申し付けください。本日はどうぞよろしくお願いします」


花「それでは早速お料理の方を運ばせていただきます」


女将が礼をして下がると、どんどん人が入ってきて、あっという間に飯が並んだ。


って、それよりも!暖弥……今日も桃葉さん、働いている…………。


これは連絡…いや、夫婦の問題か……。



とは言っても、やはり多少は心配なので注意しながら見守ることにした。










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