白馬に乗った上司様!?
こっちは必死なのに菊里課長はもう終わったかのような空気を出している事が腹立たしい。ジトリと睨む目を強くすると、課長が楽しそうに笑った。

「ハハッ。まぁそんなせっつかないで、少し食べてから話そうよ。こないだ、西春さん何にも食べないで帰っちゃったでしょ?ここ、板さんの料理も美味しいけど、女将さんの小鉢もイケるんだよ。お袋の味って感じでさ」

こないだの帰り方はお店に失礼だったなと思い出してチラリとカウンターに視線をやると、女将さんも板前さんも気遣わしげにこちらを見ていた。

「ほら、食べて」

課長が注文してくれた料理達は確かに美味しそうだ。

早く話を聞きたい気持ちはあるけれど、女将さん達の視線と食べたい気持ちに負けて箸をつけた。

「美味し……」

菜の花の胡麻汚しも出し巻き卵も凄く美味しい。地味だけど自己主張が強くなくてずっと食べていたくなる、ほっとする味。

「だろ?」

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