銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
10、あいつが動き出す ー ジェイクside
「ジェイ、すごい!月の凸凹が見えるわ!」

短剣くらいの大きさの望遠鏡で月を見ながら、セシルが興奮して声を上げる。

テラスに出て夜空を眺めている俺達。

「面白いだろ?」

笑みを浮かべ、彼女に頰を寄せた。

「どうしてあんな風になっているのかしら?」

「学者は星がぶつかったとか言ってる」

深紅の瞳を輝かせるセシルの質問に答える。彼女の美しさに思わず目を奪われてしまう。

昔、月や星より綺麗なものはないと思っていた。

だが、それと同じくらい……いや、もっと綺麗なものもあるんだな。

「満月もいいけど、欠けている月も趣きがあって綺麗ね」

望遠鏡を下ろし、嬉しそうに月を見上げるセシルの横顔をじっと見つめて相槌を打った。

「ああ。とても綺麗だ」

舞踏会が終わった後、俺とセシルは部屋に戻り、その余韻に浸っていた。
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