銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
そう呟いて彼女の長い前髪をかき上げる。

あの真紅の石榴の瞳を持つ者はそうはいない。

「いやー!」

突然、悪夢でも見ているのか彼女が絶叫した。

「大丈夫だ、セシル」

咄嗟にそう呼んで、彼女を自分の胸に抱き寄せると、その美しい絹のような輝きを放つ髪を優しく撫でた。

セシルが俺に希望を与えてくれたように、俺も彼女を恐怖から救ってやりたい。

まだこの娘がセシルと確信したわけではない。

でも、あのセシルと彼女が重なって見えた。
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