オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
「よかった……」

緊張の糸が切れ大粒の涙が溢れ出した。

「大丈夫ですか?少しここで休んでください」

浩太郎さんの秘書さんが私を椅子のあるところへと誘導してくれた。

「ありがとうございます。無事だって聞いたらホッとして……」

ハンカチで涙をぬぐった。

「ミシェルの副社長夫妻からの連絡で1週間ほどで退院できるとのことです。なので帰国は予定より1〜2週間遅れるそうです」

「そうですか……でも教えてくださってありがとうございます」

私なんて単なる一社員なのに、社長や秘書の方々が私を呼んでくれた。

すると秘書さんがくすっと笑った。

「ごめんなさい。でもさっきの電話がちょっと……」

「え?」

「トニー氏と電話で話をしていると聞こえたんですよ。遙に大丈夫だって言っておけ!って。随分元気な声だったんで大丈夫ですよ。それとこれは誰も知らないことなんですけど……」

秘書さんが近くに人がいないことを確認する。

「副社長はジッと隠れていたそうです。だけどパニックになった女の子が急に飛び出したんです。副社長はその子を助け用として撃たれたんです。ですが運よく脇腹をかすめただけの傷で済んだんです。だけどこう言う話って美化されやすいから絶対に話すなって口止めされたそうです」

「彼らしいですね」

「はい。だから安心してください」

大変なときなのに私たちは顔を見合わせ微笑みあった。
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