オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
ちょっと前まではそのことを単に凄いなと客観的に見ていた。

きっと長く付合っている彼氏がいたからこその余裕だったのだと思う。

だからいつもなら香奈が男と別れてもなんとも思わななかったのだが、智也が香奈に一目惚れして私たちが別れたことのよって客観視できなくなった。

といっても別に香奈の事を責めたりするつもりは毛頭ない。だって智也の片思いなんだから。

だけど香奈が彼氏と別れた今、智也には願ってもないチャンスが到来している。

もし香奈が智也を受け入れたら私は普通でいられるだろうか……

「ねえ～さっきからなにぼーっとつったんてんの？それよりもさ～さっきのイケメン。単なる会社の人じゃないよね～だって遥姉を見る目はなんて言うか～愛おしいっていうの？そんな感じだったじゃん。ってか……遥姉彼しいたよね。めっちゃ長く付合ってる彼氏。もしかして浮気？」

香奈の冷やかしに似た言葉に私の足がピタリと止まる。

「え？な、なによ。黙っちゃって……もしかしてマジであのイケメンと浮気？」

香奈の声がひやかしから不安な声に変わる。

「浮気とかじゃないわよ。っていうか彼とは別れたの」

責めるつもりはないのに私は低く怒った様な声を出していたことに気づく。

香奈は何も悪くないのに今の私、最悪だ。

私は自分の醜い心を悟られたくなくて逃げる様に家の中に入った。

そしてリビングのソファに座ると香奈が慌てて私の横に座るった。

「ねえ別れたって。え？なんで？」

香奈が悪いわけじゃない。でもこの状況で香奈の事が好きになったからとは言えるわけがない。

「他に好きな人が出来たんだって」

これが精一杯だった。すると香奈の顔が一気に険しくなる。
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