嘘つきな君
項垂れる私を、何も言わずにじっと見つめる仁美。

それでも。



「ま、話せる時が来たら話してよ」



どこかカラッとした返事を投げて、目の前の料理を頬張り始めた仁美。

小さな口に沢山肉を投げ入れて、まるでハムスターの頬袋の様になっている。

その姿に、目を瞬く。



「ほら。早く食べないと冷めるよ」

「仁美……」

「あんたの好きな鴨のロースト。ボーっとしてると食べちゃうよ」



そう言って、仁美はニヤリと悪戯っ子のように笑った。

その仁美の優しさに、泣きそうになる。

本当は気になって仕方ないだろうに。

怒っても不思議じゃないのに。

私の気持ちを考えて、そう振る舞ってくれた。



「ありがと……仁美」

「今更何よ。何年の付き合いだと思ってんの?」



鼻を啜りながら小さく頭を下げた私をケラケラと笑い飛ばす仁美。

その明るさに、本当にいつも救われている。



「っていうか、その年で転んで捻挫とかバカでしょ」

「好きで転んだんじゃないよ~」

「本当、昔からよく転ぶよね」



いつもの私達に戻れる様な会話にもっていく仁美。

その気遣いが嬉しくて、無意識に頬が上がる。

本当に、彼女には頭が上がらない。

どれだけ経っても、変わらない友情って本当大きい。

大人になってもこうやって笑い合っている友人は、きっとこれから一生付き合っていく人なんだろうな。





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