嘘つきな君

それでも、諦めたくないと思う。

この胸に灯った想いを、簡単に摘みたくない。


「常務は……会社の為に、誰かと結ばれるんですか」


微かに続いた沈黙を破ったのは、小さな私の声だった。

否定して、欲しい。

そんな事バカげていると笑い飛ばしてほしい。

そうすれば、私は前を向ける。

あなたをまだ、思っていられる。


ぐっと、唇を噛み締めて常務を見つめる。

そんな私に、ゆっくりと視線を向けた常務。

そして。


「たぶんね」


落とされた言葉に、世界が色を無くす。

僅かな希望が、一瞬にして消えた。

その瞬間、目頭が熱くなって涙が零れそうになる。


まるで他人事のようにそう言った常務。

それでも、その未来を受け入れているのか、どこか自嘲気に笑った。


「たぶんねって……常務はそれでいいんですかっ」

「いいもなにも、仕方のない事だ」

「仕方ないってっ」


思わず息を荒げて常務に詰め寄る。

まるで世界を一歩引いてみている様な瞳。

何もかも諦めた様な瞳。
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