初恋の人
私が紳太郎さんと出会ったのは、彼のお父様のお葬式の日でした。

訳あって家出をしていた紳太郎さんが、父親の死を聞きつけ、帰って来た時でした。

「倫太郎様！紳太郎さんが、紳太郎さんが！」

私達がお父様の遺体にすがっている時に、使用人が戸を開けて、大声で叫んだんです。

「何、紳太郎が？」

その時でした。

「失礼します！紳太郎です！」

使用人の後ろから、姿を現したがのは、彼、紳太郎さんでした。


「紳太郎、おまえ……」

今にも殴り掛かりそうな主人を押さえて、私はその紳太郎さんに、すっかり見入ってしまいました。

「父上……」

お父様の遺体に、縋り付いた紳太郎さん。

夫・倫太郎にも少し似てはいるものの、細見で色気を帯びた瞳。

どこか儚げな面持ちは、年上の女性の気持ちを動かす事は、簡単な事でした。


勿論、父親の突然の死に戸惑っているのは、紳太郎さんだけではなく、私の夫で、紳太郎さんの兄でもある倫太郎もそうでした。
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