永遠に叶えたい愛がある。



放課後、私は約束通りに勇人とドリブルを交わしている。



卒業間近だからか、3年生の多くがグラウンドで過ごしていた。



「雄先輩がね、高校の友達連れてきてくれるみたいだよ」



シュートを決めながら、勇人が言う。



普段は女の子みたいな勇人がバスケしてる姿は男の子に見えたりもする。



気づいているのかいないのかは知らないが、ちらほらと勇人の姿を遠くから眺めている女子たちもいなくはない。




認めたくはないけど、見た目は天使だからね。




「そうなんだ、誰連れてきてくれるんだろうね。女の先輩も来てくれるかな」



雄先輩とは去年まで同じ中学に通っていた、私たちが進む高校のひとつ上の先輩だ。



雄先輩も小学生のとき同じクラブチームで中学の部活では部長を努めていた尊敬する先輩の一人。



「どうだろうね。紗英みたいに日曜日もバスケしてる女の子っていないんじゃない?」



「どういう意味」



「さあ」




時折、見た目だけは天使の勇人が悪魔に見えるときがある。



きっとこの姿は私の前だけだ。



いつもは王子様スマイルもしくは天使スマイル。



まるで少女漫画に出てくる裏の顔がある、あの王子様みたいなイケメンの男の子の役、あれと一緒だ。



勇人と二人きりになると、なんだか急激に人格が変わる。 



本人はわかっているのか、いないのか。




「紗英さ、ドリブルちょっと鈍ったよな」



シュート横目にドリブルする私に勇人が言った。



「あ、わかる?なんか思うように体が動かなくなってんだよね、最近」




こういうところ、勇人らしい。



見ているとこは見ている。



憎まれ口も叩くけど、ちゃんと私のことを知ってくれている。



幼なじみってきっとこういうの。



正直、居心地は悪くない。






勇人が言うように最近、色々なところで不具合が出ている。




急激に体に変化があったからだ。



少し遅めだったが、女の子特有のアレが始まったり、身長も伸びて、下着もスポーツブラジャーから普通のブラジャーに変えた。



なんとなくだけど、今までとは違った感覚を覚えることがある。



ドリブルもやっぱりその一つ。



スピードがうまくつかめない。タイミングもずれる。



体を対応させていくためには、練習がかかせない。




それに、なんだか。




言い表せないけど、今までにない感情。



よくわからないけど、感じたことない気持ちがぷかぷかと浮かぶように、時々現れる。




私には一体この正体がなんなのか検討もつかない。




この気持ちは色々なところで現れるから、対処の仕方がいまいちわからない。




「やっぱり紗英も女の子なんだな」



ニコニコというより、ニヤニヤとした顔で勇人が言った。



ほんと、こいつ性悪だ。



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