セーラー服と恋模様。
「セリカじゃないよ、私……」

「里華だろ。知ってる」

さらりと名前を呼ぶ凛太を見上げたら、耳が……すごく赤くて。
恥ずかしそうに私を睨みながら、傘の柄を渡してくれた。

「……じゃあな」

凛太は私に傘を持たせると、マンションの中へ入っていってしまった。


紺色の傘は、一人で入るととても大きい。

トクトクトク…
鼓動は全然静まらない。


私、昔凛太に傘を貸したんだっけ。
そんな事実も、どんな傘を貸したかも忘れてしまった。

図書室に関係あるってことは、やっぱり一緒に図書委員をした時だよね……。

「ただいまぁ……」

凛太の傘の水を切って、屋根の付いたテラスに広げる。
きちんと乾かして持っていかなきゃ。

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