カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
何で携帯?

バイトを始めてから、この言葉は初めて言われた。

でも私と彼はバイトとお客様。

交換なんてしていいのか?


「良かったら携帯を教えてくれない?」


もう一度聞こえてきた言葉に周りを見渡した。

見られている。

店長にもバイトの子にも。

視線を彼へと向けた。


「えっと…………バイト中ですから。」

「あっ、ごめん。そうだよね。」


軽く頭を下げて席を離れた。


「雨宮さん、岬さんが何だって?」

「あっ、いえ、何でもないです。」

「岬さん、イケメンだよね?副社長だし。」

「ですね。でもお客様ですから。」

「雨宮さん、真面目なんだ。」

「店長、コーヒーはまだですか?」

「出るよ。」


何故か店長は岬さんがお気に入りみたいだ。

まあ、週に何度も来店してくれるお得意様の一人だからだろう。

それにしても携帯を聞かれたのは驚いた。

まさか他の子にも?

案外軽い人なのかもしれない…………そう思えてきた。
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