カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
私はさっさと携帯を鞄に入れた。

私の様子を伺う岬さんを見上げる。


「岬さん、夜は寒いですから帰った方がいいですよ。」

「雨宮さん、ごめん。俺、また失礼な事でも。」

「いえ。ただ私と岬さんでは何もかも違いすぎるのに、話は合うのかと思っただけです。」

「ごめん、怒った?」

「怒ってはいません。本当に風邪をひきますよ。」

「ごめん。」


謝り続ける岬さんに溜め息を吐いた。

そこまで怒ってないのに。


「怒ってません。はい、これ。」


私は首に巻いていたストールを外して、岬さんの首にそっと巻いてあげた。

その行動に目を見開く岬さんと視線が交わる。


「風邪をひかないで下さいね。」

「でも雨宮さんが。」

「私は電車で帰るだけですから大丈夫です。暖かくなるといいですね。」


岬さんから視線を外して軽くお辞儀をした。


「岬さん、おやすみなさい。」

「おやすみ、雨宮さん。」


私は背を向けて駅への道を帰った。

背中に突き刺さる視線を感じたが、振り返りはしなかった。


『岬さんと友達?』


その言葉が頭の中を埋めていた。
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