初恋にふさわしい人を待っている。
結局先生の真意が分からないまま教室へ戻らされた。案の定女生徒に囲まれる。こんな時ばかり私に話しかけるなんて、調子の良い人達。

「どうだった?」

「ただの雑用だよ。書類の整理を手伝ったの」

安心して、の意味を込めた笑顔を作れば、彼女達の眉間の皺が取れた。

「次呼ばれた時は交代してね」

有無を言わさないその言葉に、ひっそりと冷や汗が背中を伝った。毎週月曜に国語準備室に行くことは黙っておこう。別に言っても良いんだろうけれど、秘密にしておきたかった。

先生と私だけの、約束だから。

私にだけ口調を崩しているのは、少しだけ特別な意味があるのだと思いたい。

だからやっぱり、先生は私の王子様なんだ。
意地悪だけど。

手を頭に乗せて、先生の手の感触を思い出す。とくん、と心臓が高鳴り、頭が熱くなった。

「好き…」

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