夢のままでいたい。
父上の普段いるはずの書斎まであと少しというところでとても大きな破裂音が響いた。


「兄上、父上…」


大丈夫?皆安全?怪我してない?
お願いだから、いつもの安心できる笑顔を見せてください。
私をひとりぼっちにしないでください。


「お前がアルベール・ルーズベルトか?」


聴いたことがない声が耳に届いた。
その声が発した名は探していた兄上のものだ。
私とは違う綺麗な宝石の様な名前。


「ああ、そうだ」


兄上の声は心なしかいつもと違った。
………………様子がおかしい。
兄上の声はもっと朝を告げる鳥のように綺麗だ。なのに、この声は聞いたことがないほどに掠れていて息が荒い。


「俺たちは家族を返してもらいに来ただけだ。
お前らが15年前に誘拐した俺達の大切な家族をな。
無駄な殺生する気はねぇよ。」


相手の声は男性のものだ。父上に近い歳だろうか?相当な貫禄を感じる。
いや、多分父上よりももっと凄い。相手が並の人間ではないことが声だけでもわかった。
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