夢のままでいたい。
手足が震える。

なに?何が起こったんだ?

懸命に思考回路をいつもよりも沢山、パンクしそうな程に巡らせ続ける。

ここにいたら、私も殺されるんじゃないのか?
何も見ていなかったことにして自室へ戻るべきじゃないか?
あの時、部屋から出ずに大人しくベッドで目を瞑っていればよかったのに。そうすれば、こんな悪夢見ずにすんだはずなのに。

今更、自分の行動を後悔する。


「実際目で見るまでは信じたくなかったが………………これでは、信じるしかないな」


小さくため息を吐いて、不快そうな声で言う。
男の気配が踵を返して歩きだそうとしているのがわかった。

彼が向おうとしている先にあるのは恐らく、父上の普段いる書斎だろう。
このまま男が書斎へ行けば確実に父や父を警護している部下達の命も奪われるだろう。

私の、大切な家族の命が。

そう思うと、どうしても彼を行かせるわけにはいかない。



例え、彼らや父上が私の足を奪ったような人間だったとしてもだ。
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