溺愛王子様のつくり方
「ありがとう、燿くん」



燿くんがいたから、この辛い失恋からも立ち直ることができる。
すぐには無理だけど。
燿くんのおかげであたしは前を見れるんだ。


結局、あれから1度だけ学くんに電話をしてみた。
でも、学くんの電話番号はすでに使われていないものになっていて。
もう連絡をとる手段もなかった。

それから1年と少したって、あたしも森ノ宮を卒業してしまったし。
学くんとあたしを繋げるものは何ももうなかった。

森ノ宮にいる間は、もしかしたら来てくれるかもなんて思ったりもしてた。
未練たらしいのかもしれないけど、あんなに人を好きになったことはなかったから。

だから、もう一生会うことはないと思っていた相手だった。
記憶の片隅でずっと生き続ける。
ずっと好きな人。

だから、悲しい思い出じゃなくていい思い出として残しておきたくて。
プリクラはずっと手帳に挟んでおいた。


プリクラをたまに見て、思い出す。
それ以上もそれ以下もないはずだった。

あの日までは。



「久しぶりだね、ちとせちゃん」

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