エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「はい……」

なんだか、気まずいな……。行く気にはなったけれど、やる気は全然なかったから。

今の先生たちの会話を聞いた後だからか、余計に顔を合わせづらかった。

「それなら安心だ。早く退院してもらわないと、困るからな」

「分かってます……」

まともに先生を見られなくて、小さく会釈をすると、リハビリルームへ向かった。

あの男の子は、まだ小さいから、お母さんのことで心細い思いをしているんだろうな……。

きっと、たくさんお見舞いにも来ているんだろうな……。お母さんも、たくさん頑張っているんだ。

ーー私は、なにを考えていたんだろう。順調に回復していて、退院の目処だって立っているのに。

会社で居場所がなくなっていると思い込んで、勝手に自暴自棄になっていた。ここには、重い病気の人や、私より酷い怪我をしている人だっているのに……。

なにを、甘えた考えをしていたんだろう。自分を情けなく思っていたとき、脳裏に先生の言葉が浮かんだ。

『甘えるな』

その意味が、ようやく分かった気がするーー。
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