エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「先生は、隆斗先輩のことをお嫌いではないんですね」

静かな先生の口調から、私はそう思う。すると、先生は穏やかに微笑んだ。

「実の弟だからね。気持ちを尊重してやりたいとは思ってる。だけど、きみを巻き込むなら話は別だな」

「先生……」

先生は、微笑んで唇にキスをした。

「恵さんは、祖父と父の紹介で、一度会ったんだ。父たちも同席でね。そのときに、結婚という言葉が出たから、驚いたよ」

「最初から、それが目的でお会いされたわけじゃないんですか?」

「違う。それなら、最初から行かないよ。病院関係者の方と会うのは、珍しくないからね。院長のご子息を紹介されることは、今までもあったから」

「そうだったんですね……」

そうよね。先生が、不誠実なことをするわけがない。安心したからか、少し肩の力が抜ける。

そこを見抜いた先生が、私の頬を軽くつまんだ。

「疑ってた?」

「えっ? い、いえ。本当のところはどうなんだろうって、思ったりはしましたが……」

しどろもどろで答える私を、先生はクスッと笑った。

「責めてないよ。むしろ、不安な思いをさせてごめん。きみが、嫌な思いをした。それは、覚えておくから」
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