エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「金田さん⁉︎」

真剣な表情で走ってくる彼女に、私は半ばア然としながら立ち止まった。

偶然、見かけてくれたのかな……。それだとしたら、本当によかった。話ができなければ、なにも分からないままだから。

私に追いついた金田さんは、肩で息をしながら言った。

「受付から、小松さんが来られたと聞いて、慌てて追いかけたんです」

「え? 受付の方が、伝えてくださったんですか?」

きっと、話してもらえないだろうと思っていたのに。ビックリしながら金田さんを見つめると、小さく頷いた。

「本当に、申し訳ありません。小松さんとの業務のお話、こんなことになりまして……」

「理由を、教えていただけませんか? 私に至らない点が、あったのでしょうか?」

そう聞くと、金田さんは首を思い切り横に振った。

「違います。むしろ、小松さんのホスピタリティの高さに感動しました。だから、ぜひお話を進めたいと考えていたのですが……」

「上の方から、できないと判断されたということですか?」

答えを聞くのを怖く感じながらおずおず尋ねると、金田さんは数秒黙ったあと意を決したように私を見た。

「実は、最初から架空の業務依頼だったんです」
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