【完】恋歌
彼には分からなかった。
けれど、最早甘い果実を噛んでしまったかのように、彼女に触れてしまった彼は、熱い熱い胸の内を吐き出した。
「ねぇ…凜音?オレはね…?貴女を待ってたんだよ?もうずっと。気が遠くなるくらい、ずっと…」
その熱の篭った言葉に、ぴくりと彼女の背中が揺れた。
「愛しい人…待ってたんだ…此処で、このまま一人きり…」
「何人もの犠牲を出してきただろう」
彼女の言葉は的を得ていた。
けれど、彼の言葉は更に続いていく。
「埋まらない心を、最大のアイで埋めてくれる人」
「いい加減にしろ…私はお前の玩具になるつもりはない」