悪魔なアイツと、オレな私


窓から降りた男は、千秋の部屋を見渡すや否や、ベッドに腰かける。
思わず距離を取った千秋を見据えると、再び小馬鹿にした様な笑みだけを浮かべた。



「この俺には負けるが、今のお前も中々だぞ」


「褒めてるつもりなの?全然嬉しくないから!」


「ああ、それと、その喋り方は変えた方が身のためだな」



今の世間ではそれなりにオープンになってきたものの、それでも男としてやり過ごすには、言葉や振る舞いは浮かない方が良い。


「誰のせいだと思ってるのよ!」
目の前の男は楽しげに千秋を観察するだけだ。
大袈裟なほどに手を大きく広げて、千秋の怒りを止めようとしている。



「まあ、落ち着け。とりあえず、俺も契約者のお前の事は気にかけてやっているつもりだ。これからの生活、不自由無いようにはしてやるさ」


「現時点で既に不自由さしか感じてない!」



「そこは諦めろ。お前が本当に魅力があるなら、元に戻るのも容易い事だろう?気長に楽しむつもりでいけよ、主殿」



「こんなの楽しめるか!大体その呼び方何?」



「契約を交わしたお前が、一応俺の主になる。俺はレオ、悪魔だ。何かあれば、また俺を頼れば良いだろう?出来ることなら協力してやる」


「悪魔?」


ああ、どうか夢であってほしい。



うたた寝をして気づいたら悪魔と名乗る不審な男に、男の体に変えられてしまうなんて。


いや、夢に違いない。




夢ならば……どうか、醒めてーーー。

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