初恋~ある女の恋愛物語~
馨さんの腕枕で
横になりながら
雨音を聞いていた

私の心の中には
馨さんが居て
馨さんの心の中には
私が居る

その事実だけで
嬉しかった

簡単に捨てられる
もんだと思っていた恋はいつの間にか
離れられない関係に
なっていた

こんな関係は許されない

わかってる

これまでのように
時々会って抱き合うだけ

それでいい

それでいいんだ

それがいいんだ

自分に言い聞かせた

『千穂に本気の恋愛を
させてやれなくて
俺って最低な男だな』

馨さんがポツッと呟いた

『じゃあ、これで
終わりにしちゃう?』

『イヤだ。好きな女が
幸せになるのを黙って
見守ってやりたいけど
俺はそこまで出来た
人間じゃないからな』

そう言って私の唇を
求めた

『私はその気持ちだけで充分だよ』

『ごめんな、俺が
こんな男なんかで』

私たちはまた抱き合った

結ばれない私たちは
この愛が尽きるまで
離れないと誓った

他に誰かが傷ついても
私たちは一緒に
居るんだと誓った

偽物の愛は、いつからか本物の愛へと
変化していた

口には出せないけど

…愛してる…

馨さんを愛してる
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