初恋~ある女の恋愛物語~
『正ちゃんまで私を騙してたんだね』

我慢していた糸がぷつりと切れた

涙が溢れてきていた

止まらない涙

止められなかった

泣いている私の背中に手をかけようとした正ちゃんを振り払った

それでも正ちゃんは強引に私を抱き寄せた

『ごめんな。でも俺が千穂を救いたかったのは本心だよ。それだけは信じて』

もう何も信じられない

信じられるわけがない

苦しいよ…

裏切られたんだよ、私

優しく抱き締めたりしないでよ

本気になんてなりたくないのに

正ちゃんのぬくもりから抜け出すように私は正ちゃんから離れた

ようやく私を見た正ちゃんの瞳はとても悲しそうで小さな子犬のようだった

でも騙されないよ

もう私の傷は消せないんだから

『もういいよ』

それだけ言って正ちゃんに背を向けて私は歩き出した

追いかけてくるはずはなかった

どうせ私の代わりなんてたくさん居るんだ

私1人が消えても正ちゃんは何も痛くないんだ

痛いのは私だけ

私だけが苦しいんだ
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