初恋~ある女の恋愛物語~
音楽は止まらなかった

大ちゃんの手を握る
私の手が震えている

『久しぶりだね』

ふいに声をかけられた

『うん』

それ以上何も言えない

言葉がうまく出てこない

『後でゆっくり
話さない?』

突然の誘いがまた
私の足をもつれさせた

『うん。部屋に
行ってもいい?』

『もちろん』

大ちゃんが私を
覚えてくれていた

それだけで良かった

素直に嬉しかった

それからすぐ音楽が
鳴り止んだ

私の心臓は鼓動を
どんどん早めていた

大ちゃんは私に
微笑みをくれた

笑顔は昔とちっとも
変わっていなかった

益々わたしのドキドキを高まらせていた

その後の事は
あまり覚えていない

またみんなで部屋で
話そうという
誘いを断った

ちょっと具合が
悪いから寝ると
みんなに嘘をついた

嘘に気付く人は
誰一人居なかった

自分の部屋に戻り
洗いたての髪を整えた

メイクはしてない

すっぴんの自分なら
昔の私を思い出して
くれそうな気がしたから
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