社長は今日も私にだけ意地悪。
でも海外出張って、当然あの美人秘書も一緒に行ってるんだよね……そう思うと胸がざわついてしまう。


「RED searchは順調か?」

佐藤さんがパソコンの画面から視線をチラッと私に移し、そう尋ねてくる。


「はい。と言っても、先日の撮影以降は特に新たな仕事はないんですが。
今後、小さいステージでもいいからどんどんライブを行いたいらしく、メンバー同士で時間を合わせて、自主的に練習をしてくれています」

「彼等、そこら辺は真面目そうだから良かったよな」

確かに、どんなに実力があっても練習や努力をしてくれないアーティストは困る。その点では胸を張って彼等は優秀だと言える。


「まあとにかく、彼等がトラブルやスキャンダルに巻き込まれないように、お前も注意するんだぞ。無名の新人とはいえ……いや、だからこそゴシップや炎上は命取りだからな」

「はい。炎上っていうと、SNSとかでのことですよね。さすがにまだ、彼等のことをネットで話題にするようなユーザーはいませんけどね」

私がそう答えた、その時だった。


「柳葉、佐藤! ちょっとこっち来い」

突然、部長から声を掛けられる。私と佐藤さんはお互いに顔を見合わせてから、二人で部長先へと向かう。
部長のデスクにはパソコンが開いていて、私と佐藤さんにもその画面を見るように指示してくる。
私達が画面を覗き込むと……


「えっ⁉︎」
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