キミはずっと、かけがえない人
5th*壊れそうなほどに



「ねぇ、アンタって婚約者いっぱいいるの?」

「は?」



夕食時に、さっそく彼に言う。

言いたいことはたくさんあるけど、全てに文句を言うのがめんどくさい。

とりあえず、今日の女の存在だけでも言っておこうと思った。

そしたら、何言ってんの?って目で見られる。



「いる訳ねぇけど、何で?」

「今日、うちの会社に乗り込んできた女がいるんだけど」

「……誰?」



急に彼の目付きが鋭くなった。

私が怒られているみたいで嫌なんだけど。



「名前なんていちいち覚えてない。
でも、社長秘書の娘だって言っていたはずだけど」

「社長秘書?ああ、吉井さんか」



呟くように名前を言った。

そうそう、そんな名前だった。

やっぱり、この人も知っている人か。



「で、その娘が何しに来たんだ?」




< 68 / 210 >

この作品をシェア

pagetop