貴方が最後に残したもの
第1章
〈梨珠 Side〉

いつも通りの朝。

いつも通りの場所。

いつも通りの時間。

いつも通り彼を待つ。

「ごめん!また寝坊した!」

彼氏の星弥が走ってくる。

最近の星弥はいつもそんな感じ。

…夜までゲームとか??

『大丈夫!ほら、早く行こ?』

そう言って私は星弥に手を差し出す。

手、つなご?ってサイン。

私の行動に満面の笑みで応えてくれる星弥。

んん〜!可愛い!!

たぶん、彼氏に可愛いって変だよね?

でも、可愛いって思っちゃう程好きなの!

_____

「おはよ!ラブラブバカップルさん!」

後ろからドンっと重みがのしかかる。

『おはよ〜、玲夏』

その重みは

親友の藤咲 玲夏(ふじさき れいか)だった。

「そろそろ俺らもバカップルになろ?」

玲夏の後ろからニコニコしながら言ったのは

星弥の親友で玲夏の事が好きな

有田 蒼羽 (ありた あおば)

「ムリ、絶対イヤ」

断固拒否な玲夏にとっては毎朝鬱陶しいらしい。

好きって言ってくれてるのに…

いつもこの一言で片付ける。

蒼羽も、大変な相手を好きになったよね。

そう思いながら靴箱を開けると、

ードサドサッ

何かが落ちた。

「毎朝恒例ラブレタージェットコースター」

玲夏はボソッと呟いた。

『玲夏!そんな事言わない!!』

私は足元に落ちた封筒たちをそそくさと集めると足早に教室に向かった。

「ごめんって!本当にそう見えるんだもん」

別に怒ってるわけじゃない。

玲夏もそれを分かってて謝るフリをしてくる

実際の玲夏は笑うのを堪えるのに必死。

私は毎朝の事なので玲夏を無視して

イスに座ると1枚1枚丁寧に読む。

明日までにはその返事を書いて

お昼休みには終わらせるようにする

お昼休みは呼び出されるから。

とても嬉しいんだけど星弥しか

目に入らない私は申し訳なくなる。

ごめんなさいの気持ちを込めて

せめて返事だけは丁寧に書いて

次の日直接渡しに行く。

これが私流の誠意のある断り方だと思ってる

直接じゃなくても、

告白って相当勇気がいる事だって知ってる。

私も星弥に告白しようって決めてから

相当な時間かかった。

結局、星弥が告白してくれたから付き合えたんだけど。

だから中途半端な行動はしないようにしてる

星弥が大好きだって事も行動で示してるし、

告白してくれた人たちの気持ちには

応えられないって事も…

「毎時間それやってて寂しいんだけどなぁ」

星弥が前の席に座って私を覗き込む。

『ん〜、ごめんね!でも、書かないと』

便箋代はバカならないんだけどさ。

「嘘だよ、そーゆー所も好きだから」

星弥はニコッと微笑む。

あぁ、やっぱり可愛いな。

次の瞬間、星弥が顔を歪めた。

『大丈夫?!』

明らかに普通じゃなかった。

「平気、平気!腹、壊したのかな〜」

星弥は尚も顔を歪めたまま。

『本当に?!苦しそうだよ?』



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