ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間



以来、私たちは飼育系女子になった。

犬に例えるのも「男なんて犬と一緒」とその時に陽子から貰ったアドバイスからだ。  


「やっぱ、イケメンは
タチが悪いよねぇ。
あ~あ、そっか。
せっかくどストライクの犬が
現れたと思ったんだけどなぁ」  


「でも、陽子の彼氏だって 全然イケてるじゃない」


「どのカレ?」  


残念がる陽子を宥めようとしたが、ハスキーへの未練がまだ勝っているようだ。

ちなみに、陽子は複数の犬を飼いならすブリーダーだ。
今は3匹と聞いているが、多い時には5頭いたこともあった。  


「ほら、整形外科医の…」  


沙希が言いかけたところで、陽子の首がガックリと項垂れ、左右に手の平を振った。  


「ダメダメ、 座敷犬はメンタル弱くて。
この前なんかさぁ、
旅行行こうって言ったら、
ママの許可がいるんだ…って。
やっぱ、温室育ちはダメだよね」  


「じゃ、証券会社の営業の…
彼は?…イケメンで仕事できて…」  


「たしかにねぇ。
ハイスペックではあるんだけど…
でも、有能であればあるほど
プライドも高いじゃん、男って。
犬みたく格付けしたがるんだよね。
何かにつけ私の上に立とうとするから
やりづらくって…」  


飼ってはいるものの、飼いならせてはいないといった様子だ
頭を抱える陽子に無駄だと思いつつもアドバイスしてみた。  


「ねえ、1匹に絞ってみたら?
愛情注いだら、向こうも変わるかもよ」  


「1匹に?愛情を? 無理、無理。
それができてたら、苦労しないよ。
だってさ、1匹に絞ったとするでしょ?
それで愛情を注いで、時間も費やして、
結果、それで裏切られたらどうするの?」



   
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