エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
着物に着替えて居間に行くと、母が私を妙にじろじろ見つめてくる。


「砂羽、最近きれいになったわよね」
「そんなことないでしょ?」
「ううん。お父さんが亡くなって砂羽にも苦労させて……いつも険しい顔をさせてしまって。それに、おしゃれに気を配る暇もなかったでしょ?」


そんなふうに思っていたのか。


「大丈夫だよ。おしゃれを忘れていたのは、女子力が足りなかっただけだし」


本当はそんな気力が残っていなかったのだけど。


「ううん。顔つきも違うもの。かわいくなったわよ。一ノ瀬さんのおかげかしら」


もしそう見えるのだとしたら、母の言う通り間違いなく翔さんのおかげだ。

仕事がうまくいかなくて苦しいばかりの生活に、彼が潤いをくれた。

それに彼の隣を歩いても恥じない女性でありたいと、ちょっぴり背伸びもしている。

もちろん楽しい努力だ。
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