エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
それから三十分。
どうやら重人さんの話が終わったらしく、坂井さんが呼びに来てくれた。


「はー」


大きく深呼吸すると、翔さんは笑っている。


「行こう」


彼が私に手を差し出してくれたので握り、足を踏み出す。

一階に下りていくと、長い廊下を玄関に向かう男の人のうしろ姿が見えた。

男の人は私たちの足音に気づき、振り返る。
翔さんより少し背が低い彼はどちらかというと色白で、眼鏡の向こうの目はなんとなく冷たく感じる。

真っ黒な髪はサラサラで、少し前髪が長め。
どことなくインテリな雰囲気を漂わせている。


「翔か。久しぶりだな」


どうやら重人さんのようだ。


「はい。ご無沙汰しております」


翔さんはニコリともせず挨拶を交わしている。

兄弟らしからぬよそよそしい会話に首をひねりながら、会釈した。


「結婚するそうだね。その人が、峰岸織物の——」


うちの会社のことを知っているの? 

ブランピュールのような大きな服飾メーカーならまだしも、峰岸織物は最近勢いを取り戻しつつあるとはいえ、一般的には知られていない会社なのに。
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