そのアトリエは溺愛の檻


二回目の撮影も同じような甘い言葉と過剰なスキンシップ混じりで進んでいった。

「触れられないように撮影に集中しよう」と思うこと自体集中していない証拠で、重秋にはすぐに気づかれてしまう。さすがプロだと遠い目をする間もなく、彼の視線に捕まり動けなくなる。


何より恐ろしいのは、彼に見つめられ、その手に触れられると今まで自分の知らなかった自分が出てくることだ。きっとあの目も大きな手も広い胸も、一度すべて味わってしまったせいだと思う。あの心地良さを身体が覚えてしまっている。だから、無防備な自分が表に出てしまい、制御ができない。


これは仕事の延長。そう呪文を唱えておかないと、彼の魔法から逃れられない。それでなくても彼の手を拒めなくて戸惑っているのに。


彼に用意された服を着て、無防備な自分をカメラに切り取られる。


あのアトリエにはきっと罠が張り巡らされているんだ。慎重に進まないと罠に落ち、心がその檻に捕えられて戻ってこれなくなってしまう。


現に今もこうやって重秋のことを考えてしまっている。

撮影は夢かおとぎ話の世界だと思うようにしているけど、現実世界で不意に思い出して恥ずかしくなる。本当にこの先自分がどうなるのかわからなくて怖い。
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