【短】うさぎとピアスとチョコレート


 宇佐(うさ) きい


 そんな名前から【うさぎ】というニックネームを大我につけられたのは、かれこれもう10年も前のことだ。

 初めて会った日の記憶なんてない。
 なにせわたしは当時4歳だったから。

 大我はそのとき7つ上の11歳だった。

 今はわたしが中2で大我は大学生。


 すっかり変わってしまった大我にも、昔から変わらないことが二つある。

 まず一つ目は、ナチュラルブラックのサラサラなストレートヘア。ピアスはあけても染髪はしないみたい。

 わたしはクセっ毛だからその綺麗な髪がずっと羨ましかったりする。


「ピアスに興味あるの?」

「ちょっとは」

「校則違反だね。お母さんも、許してくれないんじゃない?」


 わたしはまだまだ親から離れられない子供で。

 大我はあと一年もすれば社会に出る大人。


「驚いたよ。あんなに俺から引っ付いて離れなくて。すごくウザかった。あの『泣き虫うさぎちゃん』が、色気づいてチョコなんて作ってるんだから」

< 3 / 17 >

この作品をシェア

pagetop