空に消える想い〜いつだって君をそばに感じてる〜
「そっか。気を付けて帰ってね。」

なるみは私のことをいつも気にかけてくれ

る。きっと私が望夢のことを思い出そうとし

ていないことも気づいている。なるみと秋斗

に心配ばかりかけて申し訳ない。

2人が教室を出るのを見送って、私は再び席

についた。

「あと、1ヵ月か…。」

望夢がいなくなって3年が経つ。少しずつ前

と同じ生活ができるようになって、今は毎日

学校に通えるようになった。それでも私の目

に鮮やかに色づく世界はまだ映らない。鳥た

ちの奏でるハーモニーは私の耳には届かな

い。

「望夢、会いたいな。」

静かな教室に、叶うことのない願いが小さく

響く。

「森口さん?」

突然、教室の入り口から私を呼ぶ声が聞こえ

た。パッと振り返ると。
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