20代最後の夜は、あなたと
思わず、みとれてしまった。


ヤバイヤバイ、落ち着かないと。


「課長、起きてください。


風邪ひいちゃいますよ」


「ん・・・ああ、悪い、いま起きる」


その、幼く見える寝起きの顔、反則ですよ。


「新しい歯ブラシ、洗面所に置いてありますから」


「サンキュー」


課長は歯をみがくと、


「おやすみ」


と言って、ソファーで寝ようとしたから、


「あっこっちです、弟の部屋でよければ」


とっさに、課長の手を握ってしまった。


気まずい沈黙が流れる。


「あっ、わっ、すみません!」


あわてふためく私を、まるで違う生物を観察するような目で見ながら、


「そんなに慌てなくてもいいだろ」


私の頭をポンポンとなでた。


だから、そういう勘違いしちゃうようなマネ、しないでよ。


その言葉を飲みこみ、


「おやすみなさい。


冷蔵庫にあるペットボトルは、飲んで構いませんので」


ドアをパタンと閉めた。


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