20代最後の夜は、あなたと
「頭、いってぇ・・・」


フラフラしながら、伊勢くんが寝室から出てきた。


「伊勢くん、大丈夫?」


私は、まだ飲んでいなかったウーロン茶を差し出した。


ソファーに座りこんだ伊勢くんは、ウーロン茶を一気飲みした。


「ここってもしかして、霧島課長のご自宅ですか?」


「そうだけど?」


伊勢くんは急に立ち上がると、


「すみません!」


と、足についちゃうような勢いで頭を下げた。


「いいよ別に、明日まで泊まっていけよ」


「すみません」


「では、私は失礼します」


バッグを持ち、玄関に向かう私を課長は追いかけてきて、


「これで、タクシーで帰れ」


千円札を数枚握らせた。


「受け取れません」


「いいから、気をつけて帰れよ」


お金は受け取ってもらえず、しかたなく私は靴をはいて外に出た。


課長はドアから顔を出して、見送ってくれた。


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