20代最後の夜は、あなたと
目的地近くと思われる高速出口をおり、街中へ向かうのかと思ったら、どんどん山の方へ近づいていった。


もうそろそろお昼ですけど。


おなかもすいてきたんですけど。


言いたい気持ちをこらえていたら、急に駐車場があらわれ、課長もそこに車を停めた。


「おまえ、好き嫌いとかアレルギーとか、平気だったよな」


「はい」


「この店、俺のイチオシだから」


課長が指差したのは、まるで昔話に出てくる農家みたいな、お蕎麦屋さんだった。


課長がすすめてくれたざるそばを2枚と、そばがきを注文した。


天井が高くて、家のなかにいるとは思えないほど開放感があった。


「おまちどおさま」


おばちゃんが持ってきてくれたおそばを、まずは何もつけずに食べてみた。


素人にもわかる、そばの香りと適度な噛みごたえ。


「おいしい!」


私は思わず、声を出してしまった。


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