20代最後の夜は、あなたと
少し渋滞に巻きこまれたけど、イライラするとか課長の裏の顔が暴露されることもなく、課長の住むマンションへ戻った。


地下の駐車場から地上に出る時も、近くの中華料理店へ向かう時も、課長は手をつないでいた。


意外と、ベッタリするタイプなんだな。


少し飲んだ紹興酒の酔いが気持ち良かった。


課長は、ベッドでも普段とは違って優しかった。


お互い果てたあとも、キスしたり髪をなでたり、一時も離れようとしなかった。


「あー、やっと俺の一目惚れがかなった」


「良かったですね」


「紗和、会社じゃねーんだから、敬語やめろよ」


「はい」


「ほらまた」


「すみま・・・じゃなくて、ごめんね」


「わかればよろしい」


「なあ紗和、今日は泊まってくだろ?」


「えっ、でも着替えとか何もないし」


「一晩くらい、そのままでいいじゃんかよ」


まるで子どものように甘えてくる課長の態度は、母性本能をくすぐった。


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