35階から落ちてきた恋
アツシさんは30歳前半くらいだろうかもう少し上か。
木下先生がもうすぐ40歳で奥さんの美知子さんは36歳。で、その弟さん。
雑誌に登場しそうなイケメンバーテンダー。
浅黒い肌は趣味のサーフィンによるものらしい。


案内されたカウンター席に座り、きょろきょろと辺りを見回してみるけれど、まだ早い時間のせいかすいていて程よい緊張感。

「で、お前はとにかく一人でここに来て酒を飲め。ナンパされるのがいいんだけど、ナンパはされなくてもいい。危ないやつが近付くようならアツシが助けてくれるから大丈夫だ。変な奴についていくなよ。というか誰が相手でもついていくな」

ナンパをされろとか付いていくなとか。

「どういうことかさっぱりわけがわからないんですけど」

「ここには自己肯定感向上のために来るんだ。水沢さんが自分は『大人のいい女』だって自覚が出るようにさ」

「うーん、先生の言ってる意味がいまいちよくわからない」

「だからさ、今日ここに僕と来るって決まって、今日はおしゃれをしたよね。
服も化粧も気を遣って。それが外見上の水沢さんの変化。で、今後ここに一人で来る時は慣れてないから緊張するだろうけど、高層階にあるバーに一人で来る女性なんてはたから見たら大人の女の人って感じでしょ。それに見合うように水沢さんも気合を入れて頑張ると思うんだよ」

「まあそーですね」
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