35階から落ちてきた恋
アツシさんは目を丸くして
「進藤と一緒にいて穏やかな気持ちになれるって?それ進藤に騙されてるんじゃないの?」と不思議そうな顔をする。
進藤さんってアツシさんからどんな風に思われているんだろう。男同士の関係ってわからない。

私は首をかしげた。
「騙されてないと思いますけど?」

「でも、俺はまさか果菜さんが進藤の恋人になるとは思わなかったな」とアツシさんは苦笑する。

え?
「アツシさん、私と進藤さんは恋人同士ってわけじゃ・・・」

すぐさま否定するとアツシさんは大きく驚いて目を見開いた。

「ええ?こんなにラブラブの雰囲気を出して違うってどういうこと?噂じゃ半同棲してるっていうし。どう見ても恋人同士だろ?違うの?」

「果菜」
進藤さんが低い声を出した。

私をそっと引き寄せて、耳元に口を寄せた。
「誰に何を聞かれても何も言うなと言っただろ。もう忘れた?」
小声で囁く。

あ、そうだった。
私もすぐに進藤さんの耳元に口を寄せる。
「アツシさんは別なのかと思ってました。ごめんなさい」

私たちのひそひそ話はアツシさんには聞こえないはず。


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