はちみつ・lover
笑顔でそう言われてしまい、不覚にもときめ

いてしまう。だって、彼の表情があまりに真

剣だから・・・否定する事なんて出来なか

った。

「葵さんだから助けたんですよ、俺」

彼は私を優しく抱き締める。こんな風に言

われて悪い気はしない。

「それに、葵さんが俺と結婚しないって言

うなら同居の話もナシなんで」

あっけらかんとそんな事を言う彼に私の目

は点になった。


・・・なるほど、同居の条件が結婚か。


いいじゃない。結婚でも何でも。こうなっ

たら受け入れてやるわ。

私は理不尽な彼の条件を受け入れる事にし

た。こんなの自宅が燃えた事に比べれば何

て事はない。ただいきなり結婚相手が彼っ

ていうのは驚きでしかないけど。

「・・・分かった。結婚する」

彼はそう言われて嬉しいのかニコニコしな

がらうなずいている。どんなに睨んでも今

の彼からは幸せオーラしか漂っていない。

「はぁ・・・」

この先、こんな結婚して上手くいくのか

な。私は一抹の不安を胸に押し殺して一つ

タメ息をついた。
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