はちみつ・lover
浴衣姿ねえ・・・浴衣なんて、何年ぶりに着

るのかな。中学生が最後かも。


彼と今日行くのは都内で行われる夏祭り。

お互いに「浴衣で行こう」と約束をしたの

だ。

「あんまり期待なんてしないでよ。大して変

わるものでもないんだから」

「そんな事言われたって期待しちゃいます

よ。葵さんだって、俺の浴衣姿見たいで

しょ?」

起き上がると、彼が後ろから甘えたように

抱きついてくる。腕をそっと振りほどいて寝

室から出た。彼もすぐについてくる。

「葵さん葵さん、もう1回キスしたいです」

「もう~、甘えないの」

リビングに足を踏み入れる。今日は私が朝

食を作るのでキッチンに立った。当番制と

かではない。彼が基本的に料理を作ってく

れるが、どうしても疲れている時だけは私が

作る事になっている。

「それにしても・・・ほんとに浴衣なんて着

て行ってもいいのかなー・・・」

彼はソファに座りテレビを観ている。聞こ

えないくらいの声でそう呟いた。
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